日記一覧

便器の話 By Y平

このまえ実験中に急にウンコしたくなりまして、一人、大学のトイレに走ったわけ。したらすごいね。最近の大学のトイレは異常です。もう、綺麗だなんだって。昨今、有料トイレなるものが流行ってますが、それに負けず劣らず、まーすごい。なんかシャワートイレとかついてて、便座も暖かい。かつ、掃除が行き届いていて、ウチのトイレより全然しごこちがいい。いやー、贅沢ですよ。穴ぐらのような実験室で、ヒゲボーボーはやしながら実験してる僕らには勿体無い。もっとこう華やかな、青山の女子大生とかが、お小水をする場所って感じがしますここは。その証拠に、なぜか男子トイレなのにビデまでついてますからね。いらない。
 で、僕もそのキラキラ光る青山風スイーツトイレで、醜い顔浮かべて勝負しとったわけ。いやあ、最高。家のトイレより全然いい。元来汚いモノとされる公共のトイレでこれですよ。大学入ってよかった。
 一勝負おえて、ふうっと一息。さあ尻を吹くかなと立ち上がった――あ、ちなみに僕は、尻を拭くときは立ってじゃないとできない派なんです。なんつーか座ったまま尻に手を伸ばせない。だってなんかそのまま便器に手を突っ込んじゃいそうじゃありません? というわけで、いつものように立って尻を拭こうとしたんですが、そのとき驚愕の事件が。
 なんと、便器様が。ビデすら付いてる高機能便器様が、勝手に僕のブツを流し始めたのである。立ち上がったと同時に、ブッシャアーと渦を巻く便器。流れていく僕のモノ。勝手に。勝手に。そちらのタイミングで。
 許せん。何が許せんって僕はまだ尻を拭いていないのである。ということは、今から紙を使って、モノを拭き取り、汚紙を便器で再度流さなければならんのである。なんですかこの二度手間は。やたらエコが叫ばれてるこの世の中で、無駄に水を使わせ僕に罪悪感を残すこの便器は一体何様?
 すると、光輝くほうから聴こえる、あなたたちの声。「あんたが座って尻を拭けば解決じゃない?」。いや、ごもっとも。小さいころ母にもよく言われた。なんで座って拭けないの! っつって怒られてた。幼心に「じゃあ、なんで座って拭かなきゃならないの?」と反抗的な精神を抱いてた。結局母親の尻拭き矯正は成功せず、僕は未だに立って尻を拭く。それがこの便器……まさか母親は20年前からこの便器の存在を予見していたのか。なんたる企業人。なんたる先見の明。すると全面的に悪いのは僕ということに……
 ならない。ばーか。よく考えてみろ。便器にあわせて僕が行動するっておかしいじゃねーか。元来、機械というものは、人間の生活を便利にするという大前提があるはずだ。忘れてはならないのは、人間>機械という図式である。トヨタの車が全自動運転にならず、運転補助装置に留まっているのはその理由だ。機械が人間を制御しちゃだめだろ。そら星新一のSSかなにかか?
 なので、人間が機械にあわせるっつのは本末顛倒である。そりゃ、最低限のマニュアルは、壊さないようにという観点では必要だ。その点では、人間が機械に合わせる部分というのはあるかもしれん。
 しかしその場合においても、マニュアルに従うという行為は、そうしたほうが長く使えるという点で、人間が得をする。結局は人間のためである。人間のために、機械にあわせているにすぎない。これは人間>機械の図式が守られている例だ。
 一方、「座って尻を拭かねばならない」という拘束は、それに値しないのはお分かりだろう。機械の都合のために人間が行動する典型である。たかが尻の拭き方……と皆は一笑に付すだろうが、これは、流行のIT化社会、SIの世界にも例えられる。妙なシステムを導入したおかげで、人間が機械に振り回され、余計業務効率が悪くなるなんて例がある。便器に限ったことでないんだよ。
 まあ便器の話に戻すわ。立ったと同時に水を流す。この一見便利と思われる機能が、立ったまま尻を拭く派の人間を振り回し、水の無駄使いを促進させる。便器会社の「尻は座って拭くもの」という固定観念が、僕の業務効率(尻の拭き方)を悪化させ、環境を悪くする。悪しき馬鹿コンサルと、便器会社が今、ダブる。尻とSIと便器がシンクロした瞬間だ。
 さらに言えば、これで人類の尻の拭き方の可能性は大幅に狭められた。この便器が世に溢れた末に、人の尻は「座って拭く」しか選択肢をなくすのである。このことがどんな弊害を呼ぶかって? それを考えるのは尻の専門家たちの仕事なので、僕はここで汚物と一緒に流されて便器の奥底へとフェードアウト。……あ、あれ? 流れない? あ、そっか立てば流れるのか。よいしょ、グキ。うわ。足が折れた。立てない。ということは流れない。あ、あ、あ。
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