忙しいアピール その3 By Y平
忙しかったしこれからも忙しい。夏休みに入って本当に1日も休んでいない。毎日何かしらしている。何が休みか。これは「私、超多忙!」「バリバリ仕事こなしてるわよ!」的な輝いてるアピールでは決してなく、もっと仄暗い、負の想念を孕んだ「死ぬ」アピールである。
しかし、往々にしてそういうアピールは誰も彼もにスルーされ、そればかりか、「それほどでもないっしょ?」みたいなノリでしたり顔をされるのでムカつく。とりわけ社会人様と来たら、「学生が何甘いこと言ってるんだ。俺達なんてもっと……」だとか言う言葉を枕にし、サービス残業がどうだとか、お盆休みが2日とかそういうお話をしなさる。そういう忙しいアピールをして、したり顔でしたり始めるのが奴らの行動パターンなのだけれど死ねよ。
うるさい。全くもってうるさい。アホではあるまいか。したり顔のクソ野郎どもは、自分の状況を基本とした、相対評価しかできない。宇宙的規模で、絶対評価として見ることができない。
分かりやすく言う。小さい小さいアリさんがいました。その傍らに人間様、つまりあんた達がいました。愚かなあんた達は可愛いアリさんに向かって、あろうことかデコピンをしかけます。ズビシ。アリの体はお前らのデコピンによってパラパラに弾けとび、目に見えないほど少量の体液を宙に撒き散らします。ゴトリ。はじけ飛んだ首が地面に転がっている具合。首だけとなったアリは、恨みを帯びた目であんた達を見据え、呟くのです。「死んじゃうじゃないか……」それを聞いたあんた達、大爆笑。「デコピンぐらいでなんだあ。俺達なんてもっと痛いことされることもあるぞう」
言うまでもなく、アリが僕で、愚かな人間様があなた達です。つまりデコピンはあなた達にとっては痛くも痒くもないが、僕(アリ)にとっては致命傷になりかねない。そこんところを理解しないといけない。僕(アリ)にデコピンを耐えろと言っても、土台無理なお話です。あんた達が僕に向かってトクトクと「学生の気楽さ」を説く度に、上記のような残酷な行為をなさっているとお考え下さい。
しかしアリは気づくのです。来年、アリは社会人というステージに上ることになります。社会とかいうとこは、デコピンどころか、車に轢かれる級のダメージを受けるところらしい。そういう世界にアリはこれから旅立たねばならない。そんな馬鹿なことってあるか。だって僕はアリだぞう。死んじゃうじゃないか。
ポジティブ。ポジティブ。まあ待て。アリにとってデコピンと車ではどちらが痛いか。これは人間で言えば、介錯無しの切腹と、水爆で蒸発死するのとどっちが痛いかという質問に置き換えられる。無論、水爆のほうが痛くない。感じる暇も無いほどの一瞬の死。どうせ死ぬなら一瞬で死にたい。バラバラになった五体を携え、ジワリジワリと命を奪われるデコピンよりは、タイヤでもって一瞬で潰される車のほうが幸せな死であるとは言えまいか。言えるね。言えますね。
そう思うと、今から旅立つ社会とかいうやつの最高なことと言ったらないですわ。僕はそこで一向一揆の僧兵のごとく、笑顔で敵に向かって切りかかり、はるか遠く、種子島をかまえる狙撃兵の一発でもって、額を打ち抜かれ、気づく間も無く死んでいく。当然、笑顔だ。命の灯が消えていくのを体中に感じながら「やった、ついに極楽浄土へ行けるぞう」と既に動かなくなった体でもってガッツポーズ。死という永遠の安息が今、僕の元に。社会人ってサイコウダネ。
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